壊れそうなほど。

駅前でトオルと落ち合って、その足で大学へと向かった。M研でいちばん仲のよかった彼とは、卒業してからもたまに飲んだりしてはいる。が、今年は仕事が多忙を極めているせいか、会うのは半年ぶりだ。

「啓吾、仕事忙しいんだっけ」

「まあね。そっちは?」

南門から入り、正門の方へと続く木陰の道をのんびり歩く。こうしてトオルと二人で構内を歩いていると、まるで学生時代に戻ったみたいだ。

「オレはまあ、公務員だしね。ぼちぼち」

当時は真っ赤だった、今はもう真っ黒な髪をかき上げながらトオルは言った。彼は市役所に務めているのだ。

「あ、沙奈ちゃん元気? って今から会えるか」

「うん。あ、でも今日行くこと、沙奈には言ってないんだよ」

「なに、サプライズ的な?」

「まあね」

笑って答えたはずなのに、小さくため息が漏れた。
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