壊れそうなほど。

食堂の受付には女の子が二人。楽しそうにお喋りしている。一人はわからないが、もう一人のペコちゃんみたいな顔には見覚えがあった。確かスエハジのキーボードの子だ。

「きみ、スエハ…」

「あ! 沙奈さんの彼氏さん!」

驚いた。おれのことなんて昨日見かけた程度のはずなのに、よく覚えているもんだ。

「こんにちは! 沙奈さん呼んできます?」

「あ、いや。まだ大丈夫だよ」

答えつつ、入口にでかでかと貼られたタイムテーブルに目をやった。

時刻は午後1時10分。今は修羅バンドというやつらがライブをしているらしい。そういえば、修羅場のような騒音がさっきから漏れて来ている。

『14:30 スエハジ』

沙奈はもう、奥の控え室だろうか。あとで行ってみることにしよう。

おれとトオルは、ライブ会場に足を踏み入れた。
< 116 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop