壊れそうなほど。
しかし、いざ暗幕を開けようとしたところで、おれはふと冷静になった。
控え室に行ってどうするつもりなのか。優輝斗に突然「沙奈はおれのものだ」とでも宣言する気か? バカバカしい。
……いや、普通に沙奈に会いに行こう。きっと沙奈の顔を見たら、この妙な不安も焦りも全部消えるはずだ。
「通っていいですかー」
ようやく暗幕を開けようとしたおれの手は、不意に背後からかけられた声で止まった。振り向けば、さっき受付で会ったスエハジのキーボードの女の子が。
「あれ、沙奈さんの彼氏さん! 沙奈さんに会いに行くとこですか?」
「あー、うん」
曖昧に答えると、彼女は脇をするりと抜けて先に暗幕をくぐり、おれを控え室に招き入れた。
「沙奈さーん、彼氏さん来ましたよー!」