壊れそうなほど。
彼女の放った大きな声に、窓際の床に座り込んで俯いていた沙奈がこちらを振り向いた。
「啓吾! 今日も観に来てくれたんだ?」
沙奈が、いつもと変わらない笑顔をおれに向ける。その瞬間、自分でも驚くほど肩の力が抜けて、安堵のため息が漏れた。
どうやらゲームでもしていたらしい、沙奈は片手に携帯を何やら操作しながらゆっくりと立ち上がり、こちらに歩いて来た。
「びっくりした! ひとこと言ってくれればいいのに」
「ごめん、急に来ることにしたから」
「そっか。でもありがとう!」
無邪気に笑う沙奈。
おれは何を不安になっていたのだろう。
全く心配なんていらない。いつもの沙奈だ。
最近二人でゆっくり過ごす時間が減った。その上昨日は連絡もつかないから、ついナーバスになったのかもしれない。