壊れそうなほど。

「 あ、でもごめん。せっかく来てくれたけど、今日一緒に回る時間取れないかも。わたし、ライブ終わったら油そば担当なんだよね」

沙奈が申し訳なさそうに顔の前に掌を立てた。

「あ、おれトオルと一緒だから気にしないでいいよ」

「え、トオルさん!? わー、会いたい!」

「トオルは今ライブ観て…」

「沙奈ー」

おれの言葉を遮ったのは佑介くんの声。奥で優輝斗と二人、座ってこちらを見ている。

「あ、今行くー。……ごめんね、今からライブ前にちょっと打ち合わせ」

「了解。じゃあライブ頑張って」

「うん。あ、あとでトオルさんに挨拶するー」

大丈夫、何も問題なんてない。

沙奈の背中を見送っていたら、ふと優輝斗と視線がぶつかった。

その瞬間。優輝斗が、何故か不敵に笑った。

ゾクリとした。


……おれは、本当に安心していて大丈夫なのか?




< 121 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop