壊れそうなほど。

飲み物を買いに行っていたらしい多田さんが中庭の方から入ってきて、全員揃ったところで、

「沙奈ー」

佑介が沙奈を呼んだ。その係、俺やりたい。

「あ、今行くー」

沙奈が返事するから、つい視線をそっちに向けてしまった。そしたら、啓吾と目が合った。

その瞬間、アイツの顔からえびすみたいな笑みが消えた。

……へえ、もしかして、俺のこと警戒してる? 今さら遅いし。だって、沙奈はアンタより俺と一緒にいたいらしいよ。

自分に言い聞かせてるだけ。しんどい。しんどいからマウント取るくらいしか逃げ道がない。

めちゃくちゃ得意げに笑ってやった。宣戦布告? そんな大袈裟なものではないけど。意思表明?

沙奈さんを俺にください。

……あれ、結婚の挨拶みたいになった。
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