壊れそうなほど。
(10 )
「あ、沙ー奈さんっ!」
二限が終わって食堂に向かっていると、背後からタタタタという駆け足と共に、元気のいい声が飛んできた。
「シゲちゃん」
「沙奈さん、今からごはんですか?」
「そうそう。佑介と待ち合わせしてるの」
お昼はだいたいいつも、佑介と食べるのだ。
「沙奈さんと佑介さんて、ちょー仲いいですよね。なんで?」
「ああ、それは…」
「沙奈ー、早くしろよー。席埋まるだろー」
答えようとしたら、佑介ご本人様の声に遮られた。食堂の入口前で、仁王立ちしてご立腹だ。
「あ、ごめん。じゃあね」
「はーい。また練習で」
友達とカフェ上でランチをするらしいシゲちゃんとバイバイして、わたしは佑介と合流した。
大学祭が終われば、すっかり元の日常だ。
……ううん。
もう、元には戻れない。