壊れそうなほど。
後ろを見上げる佑介にやっていた視線を、さりげなく彼の方へと移す。

迷彩柄のパンツに黒いパーカー。カツカレーの乗ったトレイを持つ手は、指が長くてとても綺麗だ。

「ね、俺どこ座ればい?」

薄めの唇を殆ど動かさずに、ボソリと声を出す。

真っ黒で長い前髪が目元をすっかり覆ってしまって、顔立ちはよくわからない。

「じゃあ、オレの隣座って」

「ん」

助っ人くんが席について、ようやくバンド緊急会議が始まった。

「えっと、コイツがオレの知り合いでユッキー……あれ、ユッキー、名前なんだっけ」

「優輝斗《ゆきと》」

「そうそう、優輝斗。ギターの腕はこのサークルの誰よりも上だから安心して」

「ども」

佑介の体越しに、ペコッと軽く会釈するのが見えた。
< 14 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop