壊れそうなほど。

夜7時半過ぎ、ユキと正門前で待ち合わせした。ユキは自転車。荷物はギター、それと少し大きなバッグがカゴに無理やり詰め込まれている。泊まり用の着替えが入っているのだろう。

「ユキ、おつかれー」

「ごめん。俺、油くさい」

「家着いたらすぐお風呂入っていいよ」

ユキは自転車を降りて押しながら。わたしはその隣を歩く。毎日歩く道なのに、ユキと歩くのは初めてで、なんだか違う道を歩いているみたい。

「でも腹減った。先なんか食いたい」

「あ、今日は唐揚げ。ユキ嫌いじゃないよね? 」

「え、沙奈作ったの?」

「うん。あとは揚げるだけ。ユキがお風呂入ってる間に揚げちゃうね」

「……沙奈、奥さんみたい」

ユキが照れたようにボソリと呟く。

「あはは、そうだね」

……奥さんみたい、か。

ユキに言われるのは、正直フクザツ。
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