壊れそうなほど。
言葉にならないうちに、佑介の手がぱっと離れた。ユキが戻ってきたのだ。
「あ、ユッキー。誤解すんなよ?」
「誤解? なに」
「オレと沙奈、地元一緒。高校の先輩後輩。だから仲いい。でも、まじでそんだけ」
「へえ、そうなの?」
ユキの視線がこちらに移る。真っ黒な目はまだ少し不機嫌そうだ。
「うん。軽音部で一緒にバンドやってた」
「……わかった」
バンドと聞いて少しだけ安心したのか、ユキはコクリと頷いた。
「んじゃ、オレ帰るわ」
「あ、うん」
「ま、バレないようにうまくやれよ。新曲の件よろしくなー」
彼は早口で捲し立てて、さっさと帰っていった。
わたしはもう閉まったドアに、心の中でありがとうを何度も繰り返した。
……ユキ、ごめん。本当は。
佑介、わたしの元カレ。