壊れそうなほど。

もう結婚準備だなんて。どうして急に、そんなことを言い出すのだろう。 まだ1年以上も先のことなのに。

……やっぱり啓吾は何か気づいて、焦ってる?

「さ、さすがにまだ早くない?」

動揺して、一瞬どもってしまった。

「んー、まあな」

でも、啓吾はそんなわたしの様子を気にも止めずに続けた。

「でも、沙奈は来年、卒論あるから忙しいだろ? 早めに動いた方がいい。日取りも選べるだろうし」

正論で返されて、ぐうの音も出ない。

……どうしよう。式場なんて選んでしまったら、もう後戻りができなくなってしまう。

結婚したいとかしたくないとか、そういう問題ではないのだ。啓吾とユキのどちらを選ぶのか、それを真剣に考えたいのではない。

わたしは先延ばしにしたいだけ。決めるという行為自体から、1日でも長く逃げたいだけだ。
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