壊れそうなほど。
「ま、借りただけだし、二人きりじゃないよ。佑介もいたし。焦った? ごめんね」
クソガキが。そう詰りそうになって、しかしぐっと堪えた。
「別に。そういうの気にしないから」
優輝斗は明らかにおれを挑発している。ここでムキになれば、相手の思う壷だ。
それよりも……だ。まさか優輝斗も佑介くんも、沙奈の家に出入りしているとは。バンド仲間だから仕方ないとは言え、決して気分のいいものではない。
「……少しは……よ」
「え?」
優輝斗がボソリと呟いた一言は、小さすぎて聞き取れなかった。
「ま、デート楽しんできて。啓吾」
優輝斗はそう言うと、おれの車を出口に誘導すべく離れていった。だから、呼び捨てするんじゃねーよ、クソガキ。心の中でそう呟きながら、おれはスタンドをあとにしたのだった──。