壊れそうなほど。
それにしても……。優輝斗のあの喧嘩を売るような態度は何なのだろう。
あいつが沙奈を好きだとしても、おれを煽る理由がいまいちわからない。もし今、本気で沙奈を奪いたかったら、おれに警戒させるのではなく、油断させるべきだ。おれならそうする。
もしかして……宣戦布告、か?
生意気だな。……ならば。
「風呂壊れたなんて大変だったんだな。もう直ったの?」
「あ、うん」
「佑介くんも来てたんだって?」
「あ、そうなの。次のライブの新曲の件で」
今おれのすべきことは、彼女を追い詰めることではない。
「そっか。次クリスマスライブだもんな。頑張れよ」
おれは沙奈の頭を優しく撫でた。
「うん、ありがと。頑張るね」
おれがすべきこと……それは、沙奈を逃がさないように捕まえておくことだ。
沙奈は渡さない。誰にも。