壊れそうなほど。

国道沿いのステーキハウスで食事をして、おれの家に向かう途中。助手席の沙奈が、今日1日、動画を撮る以外ずっと触らずにいた携帯を、バッグから取り出した。

「あ、電話だ。ちょっと出ていい?」

どうやら着信で震えたようだ。うん、と返して車内のオーディオのボリュームを下げる。

「あ、もしもし。……うん……うん」

『……の? ……から…』

電話に応じた沙奈のスマホから、向こうの声がほんの少しだけ漏れた。全く聞き取れないが、相手はやはり男。仕方ないと思いつつもモヤモヤする。

「……うん……明日? ……あー、えっと……夕方ならなんとか……」

沙奈がちらりとこちらに視線を送った。明日の夕方に、何か予定を入れたのだろうか。

明日の夜まで一緒にいるつもりでいる、おれに断らずに?

最近、沙奈の気持ちが見えない。
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