壊れそうなほど。

おれの家に着いてからというもの、沙奈はひっきりなしに携帯をいじっている。帰り道で借りた映画のDVDを観ているが、彼女の視線はテレビには全く向かわない。

タバコを取りに立つついでにさりげなく覗いたら、相手は佑介くんだった。明日の時間調整かもしれないし、新曲の話かもしれないが、とにかく長過ぎる。

かれこれ30分ほどメッセージをやり取りしたあと、やっと沙奈は顔を上げ、映画を観始めた。しかしその10分後くらいに、また携帯が震え、彼女は顔を落とす。

「沙奈、全然観れてないよな。明日にする?」

「…あ、そうだね。ごめん、明日にしていい?」

うん、と頷くと同時に、沙奈の携帯が震え、また彼女の視線を奪う。

「あ、わたしトイレ行ってくる」

沙奈は携帯を握りしめたまま立ち上がり、そのまま部屋を出ていった。

今のタイミング……誰かと電話?
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