壊れそうなほど。

「えー、でもさあ……うん……あはは」

10分後、沙奈は通話をしながらトイレから戻ってきた。やはり電話だったようだ。

「うん、じゃあ明日ね。ばいばーい」

じゃあ明日、ということはスエハジメンバーの誰かだ。佑介くんだろうか。でも、佑介くんが相手なら、わざわざトイレで話すこともないだろう。おれといても、沙奈はいつも平気で彼と電話をする。

ということは優輝斗か。 優輝斗との会話は、おれに聞かれたくない?何故? ……いや、さすがに考えすぎだ。

「電話、また佑介くん?」

さりげなく尋ねてみれば、「えっ、今の? シゲちゃんだよ」と返って来た。取り越し苦労というやつか。情けない。

おれ達はもう2年以上も付き合っている。今まで何事もなかったし、婚約までしているのだ。大丈夫だ、大丈夫……。

だから、大丈夫ってなんだよ。
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