壊れそうなほど。
「ありがと、優輝斗くん」

頭の上から、今度はマイクを通していない声。

「あ、ユキでいいから」

そんな言葉が口から勝手に漏れた。まともに顔も見れないくせに、一丁前に仲良くなりたいと思っている自分に心底呆れる。

「ユキ?」

「名前。ユキでいいよ、沙奈」

ねずみ色の絨毯に向かってぶっきらぼうに言葉を吐く。前髪長くてよかった。だって俺、今たぶん耳まで真っ赤だ。

「うん! じゃあ、ユキって呼ぶね」

沙奈がやけに嬉しそうに声を弾ませた瞬間。

ガチャ! とドアが開く音がした。

「ユッキーお待たせー。お、沙奈じゃん」

「沙奈ちゃんが早く来てる。珍しい」

「沙奈さん、ユッキーさん。こんにちはー!」

急に賑やかになる部室。

……ほっとしたような、残念なような。
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