壊れそうなほど。
(3)
大学祭まであと一週間。

ギターのヤスくんが入院した時はどうなることかと思ったが、助っ人のユキのお陰でなんの心配もなく迎えられそうだ。

ユキは何度か練習する内に慣れたのか、佑介だけではなく、他のメンバーとも話すようになった。まあ口数は少ないし、相変わらず愛想はよくないけれど。

「ちんちくりん、そこの水取って」

「はい。って、ユッキーさん! シゲ、ちんちくりんじゃないもんっ」

シゲちゃんが頬をぷうっと膨らます。

「ユキとシゲちゃんって仲よしカップルみたい」

わたしが何気なく放った言葉に、水を飲んでいたユキはぴたりと動きを止めた。

真っ黒な瞳が、こちらをじっと見つめる。

あ、また吸い込まれる……。

ユキに見つめられると、わたしは何故か、身動きが取れなくなる。いつも。
< 31 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop