壊れそうなほど。
背中の方から断片的に聞こえてくる、誰かと誰かの会話。洗い物をしているのだろう、調理場の方からは食器の重なる音が絶えず響いてくる。

でも、食堂のいちばん奥のテーブルに座っているわたしの視界には、ユキしか存在しない。

そのユキは黙ったまま。頬杖をついて、また前髪に覆われてしまった真っ黒な横顔をこちらに向けている。黒猫くんはまだまだご機嫌ナナメらしい。

「ねえ、ユキ」

「んー」

「シゲちゃんのこと……からかったみたいに聞こえたならごめん」

全てはあの発言のせいだ、自分なりに何がいけなかったのか考えて謝ってみた。

「いや、からかわれたとか思ってないけど」

「え、じゃあ何が」

「もーいい。……てか、沙奈ってさあ」

ユキは頬杖を外し、こちらに向き直った。
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