壊れそうなほど。
*****

日中はぽかぽかした陽気だったのに、暗くなってみればかなり肌寒い。あ、明日から11月。そりゃあ寒いはずだとパーカーのジッパーを上げた。

そういえば最近日が落ちるのも早くなった。すっかり夜の帳が下りた町を眺めていたら、プッと短くクラクションひとつ。

見慣れた白のツアラーVが、いつの間にか正門前の道路脇に止まっていた。

助手席のドアを軽く開けて体を滑り込ませれば、「お疲れ」と鼻にかかった甘い低音がわたしを迎える。

「啓吾もお疲れ。急に会おうとかいうからびっくりしちゃった」

「今日は午後外出で、直帰でいいって言われたからさ。たまには平日にご飯でも、と思って」

横顔で答えながら、啓吾は車を発進させた。
< 40 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop