壊れそうなほど。
黒地にグレーのユニフォームを着た若いスタッフが、軽やかにわたし達を迎えた。

「ハイオク満タンで」

啓吾の声に、ハイオクとレギュラーの違いは何なのだろうという疑問を抱き、そういえばセルフじゃないスタンドに来るのは久しぶりだと気づいた。

すぐ目の前のガラスをタオルが行き来している。綺麗になっているような、汚れが無駄に伸びているだけのような。微妙な気持ちになり、わたしは外の給油の様子に視線を投げた。

数字を変える給油機の向こうで、スタッフがまた車を迎え入れた。奥の建物からもう一人、男性スタッフが走って来る。

そのスタッフになんとなく目をやっていたわたしは、近くなった彼の顔を認識した瞬間、

「えっ」

思わず小さく声を洩らした。

……あれ、ユキだ。
< 42 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop