壊れそうなほど。
車はスタンドを出て、その先のパスタ屋へと向かった。

恐らくユキには見つかっていない。大丈夫、さすがに仕事中だ。あの距離だし、後ろ姿だけで気づくわけがない。

……バカみたい。

見つかったからなんだと言うのだろう。

「そうだ。沙奈達、3日目が外ステだっけ?」

啓吾がアラビアータをフォークで巻き取りながら言った。外ステは野外ステージの略だ。

「うん、そうだよ。3日目のトリ」

「じゃあ3日目に顔出すよ」

「あ、ほんとに? ありがと、嬉しい」


──わたしは今、どんな顔をしているのだろう。

さっき見たユキの姿が、頭から離れない。

……ううん、違う。

いつからだろう、もうずっと、ユキが頭から出て行ってくれない。

かなり濃厚なはずのカルボナーラは、全く味がしなかった。




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