壊れそうなほど。
「攻める? なにを?」

「沙奈に決まってんじゃん」

「だからなんで沙奈…」

「呼んだ?」

不意に、背後から甘ったるいハスキーボイス。

振り返った先の沙奈は、真っ白なふわふわのミニワンピ。いつものストレートロングは、パーマをかけたのだろうか、ゆるくウェーブしている。

ゴーン。

脳みそを除夜の鐘みたいに突かれた気分だ。

まじ天使。多田さん正解。

「あ、おはよ」

声をかけたら、沙奈は一瞬戸惑ったように瞳を揺らして、それからはにかんだように笑った。

「おはよ、ユキ」

あの食堂の一件から、沙奈はなんか様子が変だ。もしかして、俺のこと意識してるのかも。

ヤキモチ焼いてるって知って、どう思ったの?

嫌だった? それとも、嬉しい?

……そんなこと、もちろん訊けないけど。
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