壊れそうなほど。
「ギターはいつからやってるの?」

「高1から。軽音部だったから」

大きな褐色の瞳に俺が映っている。

目を合わせてるのは息苦しくて、でもずっと見てたいし、見られてたい。

「今ってどっかでバンド組んでるの?」

「やってた。夏に解散したけど」

「そうなんだ。ね、ユキ一人暮らし?」

「うん」

沙奈は俺にいくつも質問してきた。どこに住んでるの? とか、学生? とか、兄弟いる? 好きな食べ物は? とか、いろいろ。

とにかく根掘り葉掘り訊いてくる。

「なんで俺のこと、そんな訊くの?」

「ユキのこと知りたいもん」

「なんで知りたいの?」

俺の問いに、沙奈は瞳を揺らした。

「……だって、ユキだから」

返って来たのは掠れた甘い声。
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