壊れそうなほど。
「沙奈は?」

「わたし……だって、ねえ、どうしたらいい……?」

沙奈が助けを求めるように俺を見つめる。

「彼氏いるのに……ユキのこと……」

……あー、そっか。

沙奈は俺じゃなくて、罪悪感から逃げたいんだ。

でも、もう遅いよ。

「俺のこと、好き?」

「うん、好き……」

まるでため息みたいなその声は、俺の胸をきゅうきゅうと締め付けた。

食堂から漏れる楽器の音も、広場の賑わいも。何もかもが聞こえなくなる。

沙奈しか見えないし、沙奈の声しか聞こえない。

「ユキが好き。だけど……」

苦しげに声を詰まらせる。褐色の瞳が潤んで揺れた。

俺は思わず、沙奈をぎゅうっと抱きしめた。

壊れそうなほど、強く。




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