壊れそうなほど。
(5)
──最低だ。

わたし、本当に最低な女だ。

芽生えてしまったこの気持ちを、どうして胸の中に閉まっておけなかったのだろう。

啓吾とは違う体つき、違う匂い。

わたしを抱きしめるユキは、啓吾とは全くの別人。その事実は、わたしに自分の罪をはっきりと認識させる。

なのに嬉しくてたまらないわたしは、やっぱり最低の人間だ。

恋した理由なんてわからないし、恋に落ちた瞬間すら覚えていない。

気づいたらいつも目で追っていた。

ボソボソ喋るし全然笑わないし、無愛想で変なやつなのに、気になって仕方なかった。

目が合っただけで、呼吸ができなくなるほど心拍数が上がる。息苦しくて、なのに逸らせなくて。

いつの間にか、どうしようもなく好きになっていた。

もう抑えきれないくらいに。
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