壊れそうなほど。
会場に入るなり耳をつんざく爆音に襲われて、やっと少し目が覚めた。PAの後ろの狭い通路を抜けて、暗幕の隙間をくぐる。
控え室にはサークルの人達が何人かいて、この二日で顔を覚えられたらしく声をかけられた。「ギターめちゃくちゃ上手いね!」とか「普段どっかで活動してんの?」とか。
人見知りの俺には難易度が高すぎる。助けて。借りてきた猫みたいになっていたら、
「ユキ」
ハスキーなのにやけによく通る声が俺を呼んだ。
「おはよ」
「……はよ」
顔を合わせたら急に照れくさくなった。つい三時間くらい前、またあとで、ちゅっ、とか恥ずかしげもなくやってたのに。
なんて考えてたら、昨日の夜のことまで思い出して、股間がムズっとして焦った。
……俺、発情期かな。