壊れそうなほど。
沙奈は5分くらいで戻ってきた。彼女の後ろには多田さんと……誰?
「きみが優輝斗くん?」
やけに鼻にかかった声で、そいつは俺に話しかけてきた。
オフホワイトのVネックセーターに、細身のジーンズ。髪の毛をふわっとセットしてて、なんていうか洒落てんなって印象。
身長は高くない。顔もたぶん普通? とにかく、アホみたいにニコニコしてる。えびす様みたい。
「……誰?」
俺はそいつの問いかけには答えずに、沙奈に視線を投げる。
俺と目が合った沙奈の顔が、急にこわばった。……それだけで、誰なのか理解した。
「あ、この人、うちのサークルのOBの啓吾さん。スエハジの最初のベーシストで……」
多田さんが慌てて説明する。
「ふーん、沙奈の彼氏?」
──俺、今、どんな顔で喋ってる?