壊れそうなほど。
えびす野郎は、多田さんと沙奈と少し話してから「会社のやつら待たせてるから。またあとでな」とか言って、控え室から去っていった。
一生戻って来なくていい。てか帰って。
「あ、そうだ。佑介くん探さないと。どこ行ったのかなあ」
多田さんはとってつけたような言い訳をして、そそくさと控え室を出て行った。
「……」
「……」
沙奈と二人。彼女はずっと俯いたままだ。
俺は、大きく息をついた。うん、ギリギリ大丈夫…たぶん。
「沙奈」
細い肩がぴくっと動いた。
「……ユキ、ごめん」
掠れた声が、小さく床に落ちる。
「なんで謝るの」
「だって……」
「彼氏いるって知ってたし、別にへーき」
「でもっ」
ぱっと顔を上げた沙奈の瞳は、涙で潤んでいた。
……泣きたいのはこっちなんだけど。