壊れそうなほど。
「へーきっつってんだろ」
沙奈は悪くない。なのに、イライラしてつい荒っぽい言い方になる。
ダメだ、俺、すげーガキだわ。
びくっと怯える沙奈。褐色の瞳は大きく揺れて、とうとう堪えきれずにポロリと涙を零した。
沙奈は悪くない。男がいてもいいって言ったのは俺だから、俺が消化する問題だ。
鉢合わせたくはなかったけれど仕方ない。新川啓吾、M研のOBでスエハジの元ベーシスト? なら今日のステージを観に来ないわけがない。
……って、フルネーム完全覚えた、さいあく。
「……ユキ、わたし、やっぱり」
「は? なに? 終わらせたいの?」
違う、一緒にいてって言いたいだけなのに。
「だってユキを傷つけたくないっ」
「ふざけんな!」
クソガキな俺は、沙奈の手首を強く掴んだ。
自己嫌悪で死にたい。