壊れそうなほど。
「ユキ、どこ行くの」
「ユキ、待って」
沙奈を引っ張って控え室を出た。声を無視したまま、中庭の鬱陶しい人ごみを抜けて、例の非常口の前で立ち止まる。
「お前、ムカつくわ」
違う、こんなこと言いたいわけじゃない。
俺はただ。
「……ごめん、なさい…………」
涙でぐちゃぐちゃな顔で、沙奈は弱々しく呟く。
「一緒にいたい、つったのはお前じゃん」
「……だけどっ…やっぱりユキを傷つ」
「うるせーよ。今さら逃げんなバカ」
なんで優しく言えないの。自分がガキすぎて、ほんとイヤになる。
「なんでもいー。傷つけてもなんでも。そんなの、ぜんぜんいー。だから、逃げんな」
「……わかった。ごめん…」
「ごめんとかいらない」
小さく震える唇をきつく塞いだ。
……たぶん大丈夫。すぐ慣れる、こんなの。