壊れそうなほど。
昼のライブはサイアクだった。

昨日の倍以上の観客で、会場は大盛況。本当ならめちゃくちゃ気持ちいいのに。

……どうしても、新川啓吾に目が行く。

お行儀よく椅子に座って、えびす顔して観てやがる。ときどき隣のヤツと喋ってる。なに? 「あの子、俺の婚約者なんだ。可愛いだろ」とか言ってんの?

ムカつく。なんにも知らないくせに。

お前の女、昨日俺に犯されまくって一晩中アンアン喘いでたのに。バカじゃないの。

今すぐ目の前のマイク通して、全部暴露してやろうか。まじムカつく。

「ちょ、ユキ……!」

沙奈の焦ったような小声で、はっと我に返った。

……やば、イラつき過ぎて、多田さんのカウント聞こえてなかった。始まってしまったイントロに慌てて加勢する。

あー、俺サイテー。死にたい。
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