壊れそうなほど。

痛いと訴える気力もなく振り向けば、ちんちくりんがニヤニヤと笑っていた。

「……なに」

「ユッキーさん、シゲ知ってるんですよ?」

「知ってるってなに」

「……さっき見ちゃったもん」

わざとらしく声を潜める。

「ユッキーさんと沙奈さんがキ」

「ちょ!」

俺は彼女の口を慌てて塞いだ。

「……それバレたら沙奈がやばいから」

「別に言いふらしたりしないです。……2人はそういう仲なんですよね?」

「あーまあ」

「なのに落ち込んでんの? 意味わかんない」

ちんちくりんは呆れたように言った。なんかムカつく。

「このまま奪っちゃえばいいじゃないですか」

「いや、あいつら婚約」

「それ、さっき沙奈さんから聞きました。でも」

ちんちくりんは大真面目な顔で言った。

「婚約は解消できますよ」
< 87 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop