壊れそうなほど。
沙奈が戻ってきた。どうやら、えびす彼氏とそのゆかいな仲間達と、あちこち回ってきたらしい。
午前中にケンカしてしまったせいで、まだなんとなく気まずい俺は、目を合わせないように俯いてチューニングを始めた。いや、チューニングとっくに終わってるんだけど。何回目?
「ユキ」
そんな情けない俺のつむじに、沙奈の甘い声が降ってくる。
「なに」
「今日の夜もユキと一緒にいたい。ダメ?」
思わぬ言葉に、俺は勢いよく顔を上げた。少し不安そうな沙奈。ダメだ、かわいい。
「……彼氏は?」
「外ステ見たら帰るって。だから…」
「ふーん。じゃ来る?」
素っ気なく言ったけど、つい口元が緩んだ。沙奈も嬉しそうに笑う。
『あと1年以上あるんです。その間に奪っちゃえばいいだけです!』
……それも、アリかも。