壊れそうなほど。

沙奈が戻ってきた。どうやら、えびす彼氏とそのゆかいな仲間達と、あちこち回ってきたらしい。

午前中にケンカしてしまったせいで、まだなんとなく気まずい俺は、目を合わせないように俯いてチューニングを始めた。いや、チューニングとっくに終わってるんだけど。何回目?

「ユキ」

そんな情けない俺のつむじに、沙奈の甘い声が降ってくる。

「なに」

「今日の夜もユキと一緒にいたい。ダメ?」

思わぬ言葉に、俺は勢いよく顔を上げた。少し不安そうな沙奈。ダメだ、かわいい。

「……彼氏は?」

「外ステ見たら帰るって。だから…」

「ふーん。じゃ来る?」

素っ気なく言ったけど、つい口元が緩んだ。沙奈も嬉しそうに笑う。

『あと1年以上あるんです。その間に奪っちゃえばいいだけです!』

……それも、アリかも。
< 89 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop