壊れそうなほど。
日が落ちた広場に、光に包まれたステージだけが、くっきりと浮き上がって見えた。ステージの前の暗がりには、たくさんの観客の影が見える。
それだけで、地に足がつかないような、ふわんと浮ついた気持ちになった。
「あー。あ、あ。あー」
ステージに上がり、マイクに向かって何度も声を出した。発声練習だと思われているみたいだけれど、実は違う。
モニターからの返しの音量調整。これをちゃんとやらないと、ライブ中に自分の歌声が聴こえないという悲劇が生まれるのだ。
目の前にはファンの人達がずらりと並んで、騒ぎまくる待機をしてくれている。彼らに笑顔を振りまきながら、モニター横のペットボトルを拾い上げて軽く喉を潤した。
始まる直前の、この、ふわふわした感じが好き。