壊れそうなほど。
猛スピードで駆け抜けた1曲目。上がった大きな歓声も置き去りにして、そのまま2曲目に突入する。ドラムとギターから始まる、息つく暇もないパンクロック。
舞台の目の前で、片手を上げて合いの手を入れる観客達。スポットライトを浴びれば、わたしは世界的なシンガーにでもなった気分で、恥らいもなく頭を振り腰を回し、ステージを跳ねる。
「こんばんは! スエハジでーす!」
2曲終わってやっとMC。浮ついたテンションのせいで、いつもよりトーンアップした自分の声が、夜の広場に響く。
「今回のスエハジ、実は大ピンチでした。ギターのヤスくんが入院しちゃって。ね?」
「あいつ車の免許取った帰りに、チャリで派手に転んで骨折。車よりチャリの免許取れっつーの」
こんな風にわたしと佑介が喋るのが、いつものスエハジのMC。