壊れそうなほど。
4曲目は切ないポップス。青い照明に切り替わった。夜空にはいつの間にか星がたくさん光っていて、まるで宇宙の下で歌っているみたいだった。
そして、あっという間にラストソング。
「んじゃ、最後の曲です。スエハジ」
佑介がマイクに向かって言うと、多田さんのライドシンバルが軽いリズムを刻む。バンド名と同じタイトルのこの曲は、アップテンポのスウィング。
それぞれにソロパートがあって、毎度アドリブをきかせる。だから毎回違う曲になる。みんなそれを楽しみにしてくれているから、だいたい最後はこの曲でしめるのだ。
わたしの声とみんなの音、歓声、熱気、ステージの眩い照明。全部がひとつになって、冷たい夜の空気に広がって溶けていく。
サイコーに気持ちいい。
何もかも忘れそうなほど。
……ぜんぶ、忘れちゃえたらいいのに。