壊れそうなほど。
ありがたいことにアンコールをもらったけれど、運営さんからOKがもらえなかった。どうやら時間が押していたらしい。
熱に浮かされたようなぼーっとした気分のまま、ステージを降りる。もう一度舞台を見上げれば、まだ眩しく輝いていて、つい今しがたの興奮が消えずに、そのままそこに存在していた。
お疲れ様、よかったよ、などの言葉をたくさんもらいながら、沸騰している体を冷ますように、ペットボトルのアイスティに口をつける。ダメだ、もうぬるい。
「沙奈、お疲れさん」
聞きなれた鼻にかかった声に、なぜか急に夜風の冷たさを実感した。
「啓吾。どうだった?」
「かっこよかったよ。鳥肌立った」
「あはは、大げさ。でもありがとう」
……あーあ、どんどん夢から醒めていく。
わたしは歌姫から「最低の女」に戻っていく。