壊れそうなほど。

しばらく話していたら、シゲちゃんに「沙奈さーん、戻りますよー」と促された。他のメンバー達はもう先に食堂に戻ったようだ。

啓吾はいつも通りだ、いつも通りえびす様みたいな優しい笑顔で「じゃあね」と言って、会社の人達と一緒に正門の方に歩き出す。

それを見送っていたら、急に足がズキズキと痛くなった。履きなれたスニーカーなのになんで?

ため息をひとつついてから、ひょこひょこと変な歩き方でシゲちゃんの元に向かった。

「沙奈ー、来週末は空けとけよー」

背後から啓吾の声。わたしは軽く振り返って「りょうかーい」と笑顔を返す。

痛い。ズキズキする。足も、心臓も。

結婚を決めたら、もう痛いことなんてなにもなくなると思っていたのに。

わたしの現実は、前よりも全然痛い。
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