私たちの六年目
「5年だぞ? 5年。

いや、実際にはそれ以上……。

ずっとあんたに片想いしてたんだ。

そのあんたが、目の前で他の女にプロポーズしているところを見たんだ。

そんなの見せられたら、ショックで食事が喉を通らないのは、当然のことだろう?」


そんなこともわからないのか?


この男は、どれだけ鈍感なんだよ!


「片想いのつらさは、あんたが一番よくわかっているはずだろう?

だったら、今想像してみろ!

あんたが梨華さんを想ってつらかったように、菜穂さんだってあんたを想ってつらかったんだよ」


僕の言葉に、何かを考え込んでいる様子の秀哉さん。


菜穂さんの痛みが、少しは伝わっただろうか。


「あの日、あんたは5年間の片想いがようやく実って、浮かれていたかもしれないけど。

それは同時に、菜穂さんが失恋した日になったんだ。

それなのに、あんたは飲み会の席を外した菜穂さんに、店に戻ろうって言ったそうだな。

これから結婚するあんたと梨華さんがいる場所に、菜穂さんが戻れるはずないのに……」


泣き顔を人には絶対に見せたくない菜穂さんに、あんたはどれだけ卑劣なことをすれば気が済むんだ……。
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