私たちの六年目
「嫌だって何?

秀哉、自分が何を言ってるかわかってる?

前にも話したけど、私はもう秀哉と会うつもりはないの」


こんなふうに偶然会ってしまうと、よくわかる。


私はまだ、秀哉が好きなんだって。


「ずるいよ、秀哉。

自分は好きな人と結婚するくせに。

それでも私と友達でいたいなんて、そんなの勝手過ぎるよ」


秀哉は、それでいいかもしれないけど。


私は、どうしたって耐えられない。


まだ無理なの。


秀哉を忘れるには、まだまだ時間が必要なの……!


「わかってる。

自分が、すげー勝手だってこと。

わかってるけど。

菜穂を失うのが、すげーつらい……っ」


「秀哉……」


いっそのこと、私が男だったら良かった。


そうしたら、一生秀哉とは親友でいられたのに。


それにしても、知らなかった。


秀哉が私のことを、こんなにも大切に思ってくれていたなんて。


「ねぇ……。

そんなに失いたくないなら、このまま私と逃げる?」


私の意外な言葉に、秀哉が大きく目を見開いた。


「結婚なんかやめて。


私のこと、連れ去ってくれる?」
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