私たちの六年目
「いつかつわりは終わると思うけど。

お腹に赤ちゃんがいるのに働くって、なんだか自信がない。

人間関係でストレスがあると、お腹の子にも良くないと思うし。

だから、辞めるわ」


俺が何を言ったところで、梨華はもう心に決めてしまっているようだった。


梨華がどうしてもと言うのなら、俺はこれ以上何も言えないけど。


本当に、それで良いのだろうか。


なんだかどこか腑に落ちなかった。


「なぁ、梨華。また部屋が元に戻ってないか?」


この前来た時、かなり綺麗にして帰ったのに。


前よりひどくなっている気がする。


「ごめん。仕事を辞めたら、ちゃんとするから」


「あ、いや……。別に責めているわけじゃないんだけどさ」


ただ……。


せっかく俺が頑張ってあそこまで片付けたんだから、あの状態を少しは保って欲しかったなって思っただけ……。


「俺、皿を洗って来るよ」


さっきキッチンを通った時、かなりお皿が溜まっていたから。


「ありがとう。助かる。

あっ、秀哉。今夜ウチに泊まる?」


「え……?」


「明日お休みでしょう? だったら、泊まれるよね?」


梨華の言う通り、泊まろうと思えば泊まれるけど。


でも……。


「ごめん。


今夜はやめとくよ……」
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