私たちの六年目
「梨華って、あんな感じだったっけ?

自分で考えたり、ちょっと調べればわかる程度のことを、やたら人に質問して来ないか?

正直、面倒くさいっつうか。

あ、秀哉ごめんな。

今はお前の彼女なのに、悪く言って」


「いや、別に……」


「よくよく考えてみると、昔からそうだったのかもしれない。

今思えば、思い当たるフシはいくつかあるのよ。

だけどさ、あたし達がそのことに気づいていなかったのはさ……」


気づいてなかったのは?


一体何……?


「菜穂が、盾になってくれてたからなのよね」


「え……?」


「面倒な時の梨華の相手をいつもしてくれていたのは、全部菜穂だったのよ……」


俺も守も、何も言葉が出て来なかった。


そんな事実を、全く知らなかったからだ。


「今さらだけどさ、菜穂の存在の大きさを感じる。

面倒見が良くて、心が広くて優しくて。

何をしても、笑って許してくれる懐の深さがあったよね。

何も言わなくても、すぐに察して声をかけてくれるし」


「あぁ……」


そうだ。


そうだった。


菜穂はいつだって、本当に思いやりのある女性だった。


「そんな菜穂が、LINEのグループから抜けたのよ。

最初はその意味がわからなかったけど、よっぽどのことがあったとは考えられない……?」
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