私たちの六年目
「俺が梨華にプロボーズしているのを見て、ひどくショックを受けて。

それで、居酒屋から出て行ったんだ。

LINEのグループから抜けたのも、俺とはもう二度と会えないって、そう思ったからなんだ。

だから、菜穂を責めないでやってほしい」


いつか、菜穂と普通に話せる日が来るかもしれない。


でもそれは多分、ずっと先のことだから。


俺達は、それを待つしかないんだ。


「菜穂のバカ。秀哉が好きなら、あたしに相談してくれたら良かったのに。

長く一緒にいたのに、水くさいわよ。

あたし菜穂の気持ちも知らないで、梨華の味方ばっかりして菜穂のことを傷つけたよね。

どうしよう……」


そう話す郁未の目に一気に涙が溜まった。


「なあ、秀哉。

お前が梨華を好きだったこと。

菜穂だけはずっと前から知ってたって言ってたよな」


守に聞かれて、俺はコクンと頷いた。


「菜穂、言えなかったんだろうな。

お前が梨華を好きだから。

告白したところで振られるのはわかってるし。

そんなんじゃ、言えるわけなかったんだよな……」


俺は何度、菜穂を悲しませて来たんだろう。


どれだけ傷つけて来たんだろう。


菜穂はあんなにも、俺に対して優しくしてくれたのに……。


「菜穂が恋しい。

菜穂に会いたいよう」


テーブルに顔を伏せて泣く郁未と一緒に、俺も泣きたかった。


菜穂を失ったことは、俺だけじゃなくて。


郁未と守にとっても、大きなダメージだった。
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