私たちの六年目
ヒールの靴を履いているのに。


寝不足な上に、一日中立ちっぱなしの仕事でクタクタなのに。


それでも私は、駅までの道を必死に走り続けた。


ようやく駅の構内へ入って、崎田君が追って来ないとわかると、柱にヨロヨロともたれかかった。


バクバクと大きな音を立てる心臓。


こめかみからは、ツーッと汗が流れている。


乱れた呼吸はなかなか整わず、ひどく息苦しかった。


さっきから、崎田君の言葉が頭の中でずっとリピートしている。


なんだか心の鍵を、無理矢理こじ開けられた気分だ。


だけど、あの子が何と言おうと。


私の心は私だけのものだ。


この領域へは、決して踏み込ませたりしない。


そう。


それは、相手が誰であろうと。


絶対に……。
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