私たちの六年目
「もちろん、近いうちに話さないといけないけど。

今夜はまずいと思う。

これだけLINEを送って来るくらいだもの。

今、相当イライラしているはずだよ。

そこへ追い打ちをかけるような話をしたら、冷静に聞き入れてはくれないと思う……」


ますます激高して、話が変な方向へ行きかねない。


「そうだな。

確かに、菜穂の言う通りだな……。

今話したら、火に油を注ぐようなもんだよな。

とりあえず今夜は心配しないで早く寝るようにってメッセージしておくよ」


「ん……。じゃあ私もお風呂に入って来るね」


そう言って脱衣場に入った直後、胸がドキッとした。


だって……。


洗面台には、さっきコンビニで買った秀哉の歯ブラシが置かれていて。


脱衣カゴには、秀哉の下着や使ったタオルが入っていたから。


学生時代、秀哉を泊めたことは何度かあったけど。


その時は、友達も一緒だったから。


さすがに下着を脱衣カゴに入れたことはないし。


歯ブラシだって、自分のカバンに片付けていた。


だから、秀哉と二人きりで夜を過ごすのはこれが初めてなわけだ。


本来だったら飛び上がるくらい嬉しくて、浮かれているはずなのに。


梨華のことがあるから、どこか手放しでは喜べない私だった。
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