私たちの六年目
「秀哉、大丈夫……?」


私がお風呂から出ると、秀哉が床に腰を下ろしてボーッとしていた。


秀哉の手にはスマホがしっかりと握られていて。


それを見たら、おそらく梨華とのやり取りで何かあったんだろうと思った。


「俺……、今夜ここへ来て良かったのかな……。

まだ早かったかな……」


秀哉が今日私の部屋へ来たのは、実は成り行きだった。


ファミレスでの食事が終わった後、私達はドリンク片手にかなりの時間話をした。


それでもまだ話し足りなくて。


ファミレスを出た後、店の外で向い合ってソワソワしていた。


そのうち、どちらからともなく手を繋いで。


歩き始めた方向は駅……ではなく、私の部屋の方向だった。


秀哉は私に今夜泊まっていい?とは、口に出して聞かなかった。


だけど、繋いだ手から確かに伝わっていた。


離れたくないって……。


だからお互いに言葉はなくても、自然に足がコンビニに向かっていて、秀哉の歯ブラシや下着やその他必要なものを買い込んでいた。


そして、今に至っている。


「後悔してる……?」


私の問いに、秀哉がきゅっと目を細めた。


「違うんだ。そうじゃなくて……。

梨華とのことをちゃんと清算してから、

ここへ来るべきだったんじゃないかって思って……」
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