私たちの六年目
秀哉が急に不安を感じ始めたのは、おそらく梨華からのメッセージのせいだろう。


実はさっき偶然見てしまった。


秀哉のスマホに映し出された梨華からのメッセージを。


そこには“会社の友達と一緒にいるなら、ビデオ通話で証拠を見せて”


そう書かれていた。


梨華は完全に気づいている。


秀哉が一緒にいるのは、女性だということに。


二人はまだ完全に別れていないから、私は秀哉の浮気相手という構図になってしまっていて。


秀哉は、そのことが気がかりなんだろう。


「だったら、家に帰る……?

今ならまだギリギリ終電に間に合うし……」


帰ってあげれば、ひとまず梨華の気持ちは落ち着くわけで。


その後のことは、またゆっくり考えて対策を練ればいい。


そう言ったら、今まで座っていた秀哉が急に立ち上がった。


そして私のそばに来て、私をギュッと抱きしめた。


「嫌だ、菜穂……。

菜穂と離れたくない……」


「秀哉……」


そう言ってもらえると、泣きたくなるくらいに嬉しいけど。


でも……。


「ごめんな、菜穂……。

本当はこうして抱きしめるのだって。

梨華とのことが片付いてからじゃなきゃダメなのに……」


そんなことを言う秀哉に、私もぎゅっとしがみついた。


「そうだね……。


本来はダメだけど……」


やっと思いが通じ合った私達は。


どうしたって離れ難い……。
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