私たちの六年目



電気を全て落とした部屋。


少し開いたカーテンの隙間から、外の明かりが漏れている。


小さなシングルベッドは、二人で横になるには狭いけど。


こんなふうに密着する言い訳になるなら、今の私達には好都合かもしれない。


「菜穂……」


「ん?」


「こうしてると、すげー安心する……」


私を抱きしめたまま、秀哉が安堵のため息を漏らした。


「菜穂を失ってからずっと、どこか不安で落ち着かなくて。

気持ちが晴れない毎日だったんだけど。

菜穂がそばにいるってだけで、なんだかホッとする。

まだ何も解決してないのに、菜穂ってやっぱりすごいな……」


そう言いながら秀哉は、まだ少し濡れた私の髪を優しく撫でてくれている。


「秀哉……」


「ん?」


「私、嬉しいんだ。

秀哉が私と生きていこうとしてくれて……」


イベント会場で会った時は、もう手遅れだと言っていた秀哉。


梨華と別れるのは不可能だと思っていたみたいだったから。
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