私たちの六年目
「梨華に、責任とか義務とか言われて。

その言葉に、完全に縛られてたんだ。

でもさっき、ファミレスで菜穂に話を聞いてもらって。

菜穂が、俺にはそんな責任も義務もないよって言ってくれたから。

きっと別れられるって、勇気が持てたんだ。

それに……」


そう言うと秀哉は、私の頬にそっと手を置いた。


「菜穂の気持ちが、まだ俺にあるってわかった以上。

俺は菜穂を絶対に離したくないから……」


イベント会場に秀哉が現れてから、ずっと夢を見ているみたい。


秀哉が私を好きって言ってくれている。


もう二度と会わないと思っていたのに、こうして同じベッドで抱きしめ合っている。


夢なら、どうか冷めないで……。


「私達、ちゃんと恋人になれるよね……?」


不安になって、秀哉にぎゅっとしがみついた。


秀哉のスマホが暗闇の中で、何度も音を立てて光を放つから。


「きっとなれるって信じてるけど、そう簡単じゃないかもしれない。

梨華にプロポーズしたのに、他に好きな女性がいて。

しかも、その相手が菜穂だって知ったら。

余計にムキになって、俺を手放そうとしないかもしれない……」


その可能性は大いにあるよね。


梨華からしたら、大きな裏切りに感じるかもしれない。
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